仲違いしていた夫婦が交通事故にあい・・・、そして驚きの結末。

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photo by TANAKA Juuyoh

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仲違いした夫婦。
それが私の祖父と祖母。

祖母は祖父の悪口ばかり。いつも不満を口にして、笑いかけることなどない。
祖父もそんな祖母の態度に反発し、不満を溜め込んだ様子の日々。
それが二人の日常。

幼い頃に両親が交通事故で他界し、祖父母の元で生活していた私。
暖かく笑い合って、支え合いながら家族としての時間を過ごしていきたいのに、些細な事にいがみ合う二人の様子に、悲しさと怒りすら覚え家を出たのだった。


社会人としての生活を送り、一人暮らしにも慣れて来た頃、一本の電話で私は会社を早退した。
「婆さんが交通事故に遭った。」
祖父からの連絡だった。

脳裏によぎる、幼い頃の記憶。
予感してしまう、祖母との別れ。
タクシーに乗り込み病院へ向かう。
車の窓から見える、満開の桜。
なんとも表現できない心持ち。
美しく咲き誇る桜が、何を意味しているのか心は動揺するばかり。


病院に着くと、祖母は生きていた。
心に沸き起こる瞬間的な安堵と、冷静になった瞬間におそってきた不安。

様子が、違う。
祖母の顔つきが明らかに違うのだ。
まるで、別人。

ベッドに横たわった祖母が発した一言に、私の頭は真っ白になる。
「お父さん、大好きよ」
「ありがとう」
見た事もない、可愛らしい笑み。

事故の後遺症は、記憶障害。
あろうことか、失われた記憶は祖父に対する不満や憎しみ。
祖母の脳内に残ったのは、祖父への愛情の部分、良い思いでだけだというのだ。

こんな事があるのかと、驚愕する。
そして少しの間、祖父母のやり取りを見ていた。
祖母は愛の言葉、感謝の言葉だけを口にする。
祖父は…
様々な思いが交錯している様な表情を浮かべながらも、祖母のあまりにも真っすぐな感情表現に、長年の氷った心が溶けていく様子がうかがえた。
一言で嬉しいなんて表現できないくらい、憎しみ遭った時間が長かった。
それを見て育って、正直辛かった。
けれど、私の理性的な思考とは関係無しに溢れ出した涙。


病院を離れ、満開の桜を目にしたとき、私は人を愛する事とはなんなのか、その答えが一度白紙に返され、あの二人の穏やかな時間がその1ページ目に描かれた様な気がした。

公開日:2014.12.07

コメント一覧

  • たけのこ
    1 stars

    きれいな話だ。

  • 3 stars

    この場合はおばあさんの記憶戻らない方がいいね

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