もうここで最後と決めて入った駅前の小さな不動産屋だった

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「すみません。もう何件も断られ続けてきたんですが、アパートを借りれませんか。」必死の形相で話した。
不動産屋の店員は突拍子な私の様子に驚いた顔で言った。
「すみませんがそれはどういうことですか。事情を話してください」と。

無理もないこと。誰だって驚くはずです。
そして、私はゆっくり順序立てて話をした。
「私は実は前科者です。ようやく執行猶予を受けて社会に出てきました。私は罪を償うために一生懸命働き、社会に貢献したいのです。でも、家族も親戚も私を受け入れてくれませんでした。私は働く場所と住む場所を探して自立していかなければなりませんでした。ようやく介護の仕事をさせていただく場所がありました。そして今度は住む場所を探そうと不動産屋をまわりましたが、どの不動産屋も審査により貴方様には総合的な判断によりお貸しできるアパートはございません等と断られ続けてきました。お願いです。生きていくために住む場所が必要です。どうかお願いします。」
気が付かないうちに涙があふれていた。

不動産屋の店員は、私の話をさえぎることもなくずっとうなづきながら聴いてくれた。そしてこう言った。
「わかりました一日待ってください。明日返事をしましょう」と。
私はやはりここもだめかと思いながらリュックを背負い駅のベンチで朝を迎えた。
次の日、店員さんはこう言った。「うちの社長は保護司もしています。貴方を応援したいと申していました。うちのアパートでよければどうぞ」と。

捨てる神あれば拾う神あり。私は拾っていただけた。有難いことだった。
たかがアパート一部屋借りるだけなのにこんなに感謝したことはなかった。
私は今、このアパートに住ませてもらい、介護事業所に通っている。

公開日:2015.01.05

コメント一覧

  • やよい
    1 stars

    神様みたいな人ですね。

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