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整形外科、形成外科の病棟看護師3年目になったころ、ある患者さんと出会いました。Mさん、男性。
仙骨部、腰骨のところに褥瘡(床ずれ)の治療を受けられている方でした。
病棟の特色で、手術をすれば元気に退院していく患者さんばかりの中で、Mさんはなかなか回復に至らず、一進一退の治療がされていました。
毎日奥様が面会に来られており、3人で話す機会はたくさんありました。
その中で感じることはやはり家に帰りたいというMさんと奥様の強い気持ち。
何度か試験外泊の話も出ていましたが、いざそうなると体調を崩してしまい実現出来ずにいました。
そんな中でも状態が安定していたため、私は2人に試験外泊の話を切り出してみました。「外泊が決まったら体調を崩すんだよね」と言いながらも、とても嬉しそうに笑っていました。
その日から外泊に向けて準備を進めていきました。
そして準備も整い、2日後に外泊を迎えた日に高熱が出たのです。
「やっぱりなー。でも頑張って熱を下げて、ま外泊できるようにがんばるよ」と話されていたのですが容体は悪化するばかり。
治療の効果も出ず、自然に看取ることになったのです。
その日は夜勤でした。
血圧も低下、呼吸状態も悪かったのですがMさんは懸命に生きていました。
状態は変わることなく日勤に引き継ぎ、休憩室で帰り支度をしていたら、私のガラス製のタッパーが割れたのです。
嫌な予感がしてナースステーションのモニターを確認すると、心拍0を示していました。
Mさんは亡くなられました。
看護師として、初めての看取りとなったのです。
今年で看護師10年目になります。
今でも笑っているMさんを忘れることができません。
そして、少しでも家に帰らせてあげたかったという後悔も消えません。
そんな思いを抱えながら患者さんと向き合っています。
この後悔が他の患者さんに生かせたらと思っています。
公開日:2015.01.08
素晴らしい志ですね、立派です。