自転車で日本一周していたときの感謝

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photo by pakutaso.com

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27歳の頃、自転車で日本一周にチャレンジしました。
競技の様に「ただ走りぬく事」に疑問があったので、
自分は1つの都道府県に1ヶ月の滞在を目安としておりました。

スタートは夢の一歩に心踊り、
楽しさと期待で慢心。
しかし、それは長くは続かず。

独り旅というのは「自由」の反面、孤独との戦いでもありました。
どんなに綺麗な景色を見ても、どんなに美味しい物を食べても
不意に刹那に襲われたり、自信の無さか人目を気にしてしまったり、、
引き返す訳にも行かず、
兎角、我武者羅に自転車を漕ぎ、
雑念を取っ払う事に努力しました。

時折、通り縋りの方々に応援を戴くと、
「自分はこんなにも弱かったか」と自問してしまう程
感謝の念が込み上げたり。

そしてまた、 次の地へと漕ぎ出すのです。

沢山の方に出会いました。
これは、その中でも深く印象に残りました。

半年をかけ、出身地の岐阜から大阪に到着。
自転車がパンクしたのは始めての事。
丁寧に乗ってきたつもりですが、
流石に20キロ近くの荷物を積んで長旅をすれば、限界が来たようです。

僕は小さな公園を見つけましたので、
そこで修理する事にしました。

そこには、沢山の子供達が一丸となって遊んでいましたが、
気にせず修理を進めておりました。

ふと顔を上げると男の子が目前に立っていました。
10歳位でしょうか、青色の服を着た男の子。

不思議そうな顔で
「お兄ちゃん、何してん?」と。

経緯を伝え出すと、
男の子の友達も4人程、駆け寄ってきて
僕の話を聞いてくれました。

「おにいちゃん、すごいな。僕もやってみたいわ」

などと笑いながら喋っていますと、
気付けば夕刻に。

そこに、エプロン姿の女性が一人近寄って来まして
「そろそろ帰るよ」と。

「そろそろ行くわ。学童保育の先生やねん。」

なるほど。
子供達は皆、学童保育の子達だった様です。

「またね」という言葉と手を振る子供。
疲れた体に、頑張る力を与えてくれました。

して、
子供達が去った後、
テントを張る場所も確保しなければ夜になってしまいます。
急がねばと荷物を積んで出発しようとした時、
目の先にはさっきの子供4人が 走ってくるのが見えました。

「お兄ちゃん、待ってーや」と。

どうしたんだろう?と待っていると、
青色のシャツの子が駆けつけるや、
僕の手におにぎりを渡して来ました。

「学童保育で作ったおにぎりやねん。後で食べてーや」と。

それは、小さな手で握ったのが判る様に小ぶりのおにぎりでした。
僕は、なぜか涙が出そうになりましたが、
子供の前で泣く訳にはいきません。
ぐっと我慢して、笑いながら有難うと言い、
最後の別れをしたのです。


あの時の感動は今でも忘れません。
胸の奥から暖かい何かが込み上げて来る感じで、
とても気持ちいいものでした。


また、会いたいですね。

公開日:2014.12.10

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