photo by photo AC
この嬉しい気持ちを誰かに聞いてもらいたくて投稿しました。
それは最近のことです。
コロナ騒動でスーパーやドラッグストア、ホームセンター、コンビニと色んな店からマスクだけでなくティッシュやトイレットペーパーまでもが消えていきました。
普段仕事で忙しくしていてテレビのニュースや新聞を読んでいない私は情報を掴むのが周りより一足遅く、気がついた時には完全に出遅れ何処へ行ってもトイレットペーパー1つとして手に入れられませんでした。
そんな中、私は一人暮らしをするために新しい土地へと引越しが決まっており、日常生活に必要な消耗品の類を手に入れられないまま慣れない土地へと1人でやって来ました。
幸いティッシュに関しては偶然にもコロナ以前に買い置きしており大量のストックがあったので助かりましたが、さすがのトイレットペーパーは入手出来なくて困り果てている状態でした。
これからどうしたものかと考えながらもアパートへと荷物を運び込み昼食も取らずに黙々と作業を行っていました。
ふと気がつくと夕方になっていました。
さすがに疲れ気分転換も兼ねて飲み物を買いに行こうと車で少し言ったところにあるコンビニへと向かいました。
店に入るなりやはりチェックするのは日曜生活品コーナーです。
勿論そこには空っぽの陳列棚があるだけでした。
諦め溜息をつきながらドリンクコーナーからジュースを取り大人しくレジへ向かいました。
もうこのまま一人暮らしするの1ヶ月ほど先延ばしにしようかなー…でも、家賃先に払ってるから勿体ないしなーとボーッと考えていたらいつの間にか誰に向かって話してる訳でもないのに口が勝手に動いてました。
「この辺でトイレットペーパー売ってないですか?」
自分でもビックリです。
何故なら私はあまり積極的な方ではなく普段から探し物をしていても店員に聞かずにウロウロ店内を歩き回って自力で目当ての商品を探そうとするタイプだからです。
つい、やるせなさから独り言が口をついて出たのだと思います。
でもそんな私の独り言にレジを打っていた高校生ぐらいの男の子の店員が手を止め律儀に返してきました。
「今は何処にも置いてないですねー。ウチの店もずっと入ってきてないですよ。」
きっと同じような質問を色んなお客さんからされてたんだろうなと思います。
「今日はショッピングセンター〇〇〇では大量入荷したみたいですよ。まあ、それもこの時間ではあるかどうか……」
そう言ってレジを打ち続けるアルバイト君。
彼の言う店に行けばもしかしたらトイレットペーパーが手に入るかもしれない!!でも今日引越してきたばかりの私には彼の言う店の場所が分からない。
「そのお店って何処ですか?」
「え??」
ショッピングセンターというのだから結構目立つような大型の店舗だったのかもしれない。
地元民なら知ってて当然の買い物スポットなんでしょうけど私は知らない。
「今日引っ越してきたばかりでお店の場所がわからない。トイレットペーパーがないと生活がスタート出来ない……」
彼は親切丁寧にお店の場所を教えてくれました。
かと言って今から行っても手に入るかもわかりません。
場所を教えてもらったけれど辿り着く自信がありませんでした。
行っても目的の物が手に入らず時間をロスするぐらいなら諦めて引越し作業に戻るべきか……
グルグル悩んでいるとアルバイト君が「ちょっと待っててください。」そう言ってレジ奥のスタッフルームへと消えました。
程なくして戻ってきた彼は私に1つの大きめのビニールパックを手渡してきました。
「あの……これ僕個人で買っておいたものですけど良かったらどうぞ。」
そう言って渡してくれたのはトイレットペーパーが12ロール詰まったパックでした。
「え?!」
私は驚きました。
「引越したばかりで生活困りますよね!!」
「でもこれは君が買ったものだし、私はいいよ。もう少し他のお店探してみます。だからこれは君も必要だろうから大事に使って。」
そう言って断ろうとしたらアルバイト君は笑って「僕からの引越し祝いです!!」とふざけた口調で笑って言ってくれました。
迷ったけれど私は彼の気持ちを受け取ることにしました。
彼のおかげで今なんとか新生活のスタートをきることが出来ています。
あの日から暫くして徐々にティッシュやトイレットペーパーが店にまた並び始めました。
それでもまだ十分とは言えず相変わらずの品薄状態が続いています。
一部の人間による買い占めがあれば困る人だっている、それに手を差し伸べてくれる人がいる。
私も手を差し伸べられる側の人になりたい……そう思える高校生ぐらいのアルバイト君に教えられた経験でした。
公開日:2020.03.14
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