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僕にはちょっと怖い親戚のおじさんがいまして。いわゆる、ヤクザの下っ端と呼ばれる人なのですが、当時中学二年生だった僕と、その人との話です。
僕は彼をあつしさんと呼んでいました。あつしさんとは、年に一度親戚の集まりで会うくらいの関係で、お年玉も毎年くれる、見た目は怖いけど優しいおじさんという印象でした。
小学校六年生のお正月、例年通り親戚の集まりであつしさんと会いました。彼が坊主頭にななっていたことに、少し驚きました。
食事をしながら、あつしおじさんは
「いやあ、まいったよ、仕事トチって刑務所入っちゃいまして…おとなしくしてたらすぐに出してもらえましたけど。」
と、手羽先を片手に、刑務所に入ったという話を笑い話にしていました。
僕は驚きを隠せなかったのですが、父親もおじいちゃんも笑っていたので、この人にとってはなんでもないことなのだと解釈しました。
翌年、一年経ったにも関わらず、あつしさんの頭は未だに綺麗な丸刈りでした。当時中学一年生の僕は調子に乗って、
「あつしさん、また刑務所入ったんですか?」
と冗談半分で尋ねたら、
「はあ?これは美容院でやってもらったんだよ。大人をからかうんじゃねえ。」
と、半ギレで返され、さすがに怖かったので、それ以降あつしさんに話しかけることなく、家に帰りました。
そして翌年、あつしおじさんは坊主頭で現れました。去年のような過ちをおかしたくなかったので、頭の話題には触れず、ただ周りの親戚の話に相槌をうっていました。
突然、あつしさんが僕の名前を呼びました。僕は緊張と驚きで少し裏返った声で返事をして、何を言われるのかと恐れていると…
「どーっちだ?」
なんと、あつしさんは自分の坊主頭の理由が、刑務所かファッションかの二択クイズを出してきました。
正解はファッションで安心しました。
現在はその世界から足を洗い、フリーターとして生活しているそうで、坊主頭の彼を見なくなりました。
公開日:2015.01.04
どーっちだww