ある日、家族と夕食の団らんをしている時だった。

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当時思春期真っ只中だった中学生だったわけ。
あーでもないこーでもないという父に皮肉ったことを言ってて。
その日もいつも通り皮肉なことを言ってたわ。
そしたらちょっと喧嘩になっちゃって
ちょっとした討論になっちゃったわけ。
んで、父が語り始めてめんどくせーなぁって目をテレビに向けた時だった。


もーね、驚いた。さっきまで和気藹々としてた映画だったんだけどさ。
いつのまにかアンアンしてたわけ。
父が真剣にこっちに話しかけてる横で。


一瞬ならね、許せた。時が過ぎるのを待てたんだ。
だけどね、もーそれがメインと言わんばかりにどんどんエスカレートしていくの。
おねぇさんがもー激しく動いてて。隠すとこありませんとばかりに生まれた姿をしてるの。


「おまえ、聞いてるのか。俺がおまえのとしのときはな…」
って話してるけど、全然頭に入ってこなくて。
隣にいた母も気まずそうな顔してて。
今まで見たことないほど険しい顔してんの。


いつもなら父の言葉に言い返してたりしてたのだが、その日はもー頷くしか出来なくて。
うん…そうだねって。
幸い父が気付いてる様子はなくて、テレビのリモコンを探した。


そりゃーもう、必死に目線泳がせて。
魚かってくらいギョロギョロした。
どこだどこたー?って。
したらあったの。父の目の前に。


やべー!っべーわ!って本気で思った。
どうにか父の目線をリモコンに向かわせないように誘導し、チャンネルをそっと変える。
そんなプランを必死に考えた。
父がチャンネル戻して最悪の事態にならないため、最善の方法を考えた。


すると、母が私に任せなさいとばかりに父と会話をし始めた。
よし、お母さんグッジョブ!
そして私も聞いてるフリをしてそっとリモコンに手を伸ばした。
そーだよね。うんうんみたいな感じで頷きつつ手はリモコンの方へ。


そしてやっとチャンネルを変えることに成功した。
やってやったぞと。みよ、この勇姿をと。
母も安堵の顔をする。よくやったと。
安息の食卓が舞い戻ってきましたよと。
母の顔を見てドヤ顔して、食事をしようとするのもつかの間。


「何チャンネル勝手に変えてんねん。」
そしてチャンネルを戻す父。


もーね、希望が絶望に変わる瞬間ってこんな感じ何だねって。あの時の光景は二度と忘れはしない。


一番思い描いた最悪の事態になった。
チャンネルを戻した瞬間アンアン言い始めるテレビ
そしてただならぬ沈黙。
ほんと、時止まっちゃったですか?ってなったほどに静かだった。


地獄絵図だった。やっちまったって思った。
どう考えてもフォローのしようがない。
とても中学生だった私にはどーすることもできなかった。
そしてその沈黙を破ったのが母
「…あんたが喋ってる間にテレビがイヤラしいことになったから変えたんよ…」


フォローのつもりなのだろうがなんのフォローにもならない母の言葉。さらに気まずさが増す。
もー、頭の中では大騒ぎ。下手なこと言えないこの状況な。


そしてさっきまで饒舌だった父は何も言わず。
ただチャンネルを回してテレビを見始める。
普段アニメなんか見ないのに。一生懸命そっちみてた。
そしてなんでこのタイミングかなって思ったんだけどそれが銀魂っていうアニメでさ。
いいタイミングで突っ込むわけ。
「やっていいことと悪いこともわかんないわけー!!?」みたいなことを言っててさ。


そして静かに食器の音だけがただ響いていた。
面白いアニメのはずなのに。葬式でもあったかしら?ってくらい皆黙々と食べてた。


吹き出すことも許されず、ただ震えて堪えるしかなかったあの日の中学時代の話。

公開日:2019.07.19

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