これは貴女に贈る私からの最後のラブレターです。

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photo by ぱくたそ

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たまちゃんへ
本当は君に直接会って伝えたいけれどなかなか叶わないため、筆を執ることにします。最近、よく分からないけど、戦争を扱った本や映画などが増えてるようなので今なら書けるかなと思ったのと、もし生きている間に会えなかった時、貴女がこの手紙を何かしらの縁で見つけてくれたならと願っております。
そして、これが貴女に贈る私からの最後のラブレターになることでしょう。なぜなら悲しきことにあれほどまでに愛しておりました貴女との思ひ出が日に日に消えてきてしまっているのです。
あぁ、たまちゃん、今貴女はどこで何をしていますか?幸せに暮らせているでしょうか?終戦からおよそ77年。来年は78年だそうです。早いものですね。もし、あの時私は特攻隊としてはるか彼方の空へと消えていなければもしかしたら今は貴女とのんびりとした生活を送っていたことでしょう。運命というものは、言葉の力というものはとても恐ろしいものです。私はただ、飛行機が好きで、広い広い空が好きで、愛する人達を守りたくて、ただそれだけだつた。死ぬために、意味の無い死を迎えるためにパイロットを目指したわけではなかった。何度も何度も、『貴様は大和魂がないのか!』『日本男児の心構えはどうした!』だのと怒鳴られ、蹴られようと抵抗しました。決して命が惜しいからとか、日本を守りたくないという気持ちではなかった。特攻だなんて意味が無いと分かっていたから、もっと他の方法があるのではという気持ちで私はあの紙にマルをつけていました。でも、何よりたまちゃんを悲しませたくなかった。だから、私はいつも特攻を断り教官にボコボコにされてました。いつも、帰る度に私の顔とか体が腫れていたのはそういうことだったのです。ても、心配させたくなく言いませんでした。だって、貴女はとても優しいのだから。
お互いの両親の都合で お見合いをし、恋愛には一切の興味を示さず少し冷たい感じだった私の心を貴女は開いた。たまちゃんに出逢えんかったら私は特攻隊に少しは反対しつつもすぐに志願していたかもしれない。でも、たまちゃん、君というかけがえのない存在がこの命かけて守りたいと思える存在が出来たことで、死にたくない、特攻隊に行きたくないと思い、最後は君の未来を開くのだと、特攻隊に行くことが出来た。ちなみに私が任務を果たしたあの日、不思議と心持ちはスッキリとしていたんだ。恐怖心もなかった。
貴女が送ってくれた写真を実はこっそり胸ポケットにしまっていたんだ。あの写真は今も私の死骸とともに世界の海のどこかにあるはずです。鮫に食べられてさえいなければ。
さて、今、私が本当に言いたかったことは 別にある。
あの時…君に特攻隊になったことを告げた日、泣いて行かないでと言った君の手を、優しく綺麗な手を冷たく振り払ってしまったことを謝りたいのです。思えば君はまだ16。そして私達は結婚しているとはいえ、仮初。でも、未来の妻として必死にあの時代、無愛想な私を支えようとしてくれた人を私は冷たく突き放してしまった。でもそうでもしなければ貴女と別れなければいけない現実を受けいられなかった。最後汽車で別れる時、貴女が実は密かに泣いていたことを私は知っていますよ。あの時代、周りから見たら私達はある意味非国民とも言われてしまいそうですね。でも、これはそもそもたまちゃんの心が優しいからできるのでしょう。貴女は本当にお優しい方だ。あのあと、現代で生まれ変わった私は原爆が投下されたと学校の歴史の授業で教わりました。たまちゃんがその日被爆地から遠いところにいたことをただただ願うばかりです。

また生まれ変わっても再び貴女と出逢いたい

公開日:2022.12.28

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