photo by (c)Tomo.Yun
ここは現実なのか、それとも夢なのか?
夢にしては、肌に触る全ての感覚が生々しいし、かといって現実にしては、前後の記憶が曖昧で、どうしてこうなっているのかがわからない。
突然目の前の道路に裂け目ができ、あちこちからあがる悲鳴。
頭の中に浮かんだのは、ちょうど外出中の弟と母親。
「大丈夫かな?」
大きくなる不安もまた現実味があり、それが夢でないことを証明しているようだった。
なぜか、私は走っていた。どこへ? 弟と母親がいそうなショッピングセンターに。
どうやって? この状況下では走るしかない。
けれど、気づけば私はショッピングセンターの前にいた。ここで、「ああ、これは夢なんだ。」 と確信した。
目の前には、バス停でバスを待つ母親の姿。そして、母親を飲み込まんと向かう地面の裂け目。
「お母さん、逃げて!」
叫びは悲鳴に近かった。母親にその声は届いたが、その場を動こうとはしなかった。
裂け目へと落ち行く前に、声にならない言葉が聞こえた。
ーーお母さんのことは気にしないでいいから、貴女だけは生きて……。
泣き叫んだ。酷く遠くから聞こえた叫びだった。
目を開けた私は寝室にいた。そして、近くには心配そうに私を見る母親の姿。
不安に駆られ、母親に抱きつく。伝わる温もりが、本当の現実を教えてくれた。
公開日:2014.12.09
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