私はその日、埼玉県某所を自転車で走っていました

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その道は、片側2車線の大きな幹線道路で、私は右側の歩道を走行してたのですが、行く先に幼稚園くらいの男の子と、母親の親子連れが歩いていました。
私は親子を追い抜き、すぐ先に信号があったので、停車しました。

すぐに先ほどの親子が追いつき、私の後ろで信号を待っている間、楽しそうにしゃべっています。
周りを見渡すと、道路を挟んだ向かい側に某バーガーショップが見えました。
そこは郊外の幹線道路で、他には周りに田園風景が広がっているだけでした。
後ろでは男の子が楽しそうにしており、その声が何気なく耳に入っていたのですが、男の子の口にした、ある一言に、私の意識は掴まれました。

「あっ!ミニクーポン!」
男の子はそう言いました。
「ミニ」と「クーポン」。
意味のある単語の組合せです。
男の子がそう言った直後、お母さんが「指差さないの」と男の子をたしなめていました。
つまり、それが目で確認できるものということ。
まず「クーポン」という言葉で、目の先に見えているバーガーショップに目が向きました。
店先には、新メニューかキャンペーンの宣伝とおぼしき垂れ幕が下がっていて、おそらくこれを指したものではないか。

しかし男の子のお母さんの言った「指差さないの」の言葉は、人に指を指すことは失礼に当たるからやめなさいと言っているように受け取れます。
周りを見渡してみると、その付近にいるのは、私と、その親子だけです。
つまり私に対して放たれた言葉?

私は、自分の身の回りを確認してみました。
身に着けている衣服やバッグに自転車・・・。
そして、ひとつのものに思い当たりました。
私は自転車の荷台にマスコットをぶら下げていたのですが、そのマスコットのキャラクターが、我が埼玉県の誇るゆるキャラである「コバトン」でした。
蛍光処理が施してあるので、夜道の安全とお守りとしてつけていました。
紐でぶら下げてあり、走行時の振動で揺れて目立っていたと思うので、男の子はこれを指して言ったのではないか。
だとしたら、なぜコバトンをミニクーポンと言ったかは謎なのですが・・・。
そもそもクーポンだけで意味は成しているのに、なぜミニを付けたのか?
大した割引のされないクーポンということでしょうか。
もしや、男の子は私自身のことをクーポンと例えたのではないか。
クーポンは主に割り引きチケットとしての使われることが多いと思います。
つまりそれ単体では使用することのできないもの。
人に例えると、一人では何もできないということ・・・。
しかもただのクーポンにも満たないという意味なのか、ミニまでつけて・・・。
まるで自分の弱さを見透かされたようでした。
しかし今思えば、あの男の子の言葉には強いメッセージが込められていたのだと思います。
自分自身の足でしっかりと歩いていけという・・・。
今も、この言葉が自分の中で鳴り響いて止みません。

公開日:2015.01.06

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