photo by フリー素材屋Hoshino
目黒にある聖A教会です。そして私の子供達を貸して欲しいと言ってきました。
サウンドオブミュージックや英国王室の結婚式で見られるような長~~いベールを引くので、裳裾持ちを兼ねてブライドメイドがたくさん欲しいらしいのです。
でも、昨今は少子化のせいか、子供が払底しているので、保育園児の我が家に依頼がと言うところなんです。
が、「そんな晴れ着持っていないわよ」「それは私が作るから、花冠も作るので是非、協力して」すったもんだのあげく、全面的に我が家で協力態勢を整え、当日を迎えました。
前日は大嵐。どうなることかと気を揉みましたが、幸い、当日は野分けの後。綺麗に晴れ上がりました。我が家で花嫁も着付けて教会へレッツゴー。子供達も私の車で教会へ早めに着きました。
子供達は教会で式場係にベールを持ってバージンロードを歩く時の練習を何度もさせられました。ゆっくりね、一歩右足を踏み出したら、左足を揃え、それから又一歩踏み出すようにとしつこいくらいでした。
まあ、5才と3才の娘たちですから、係も気を使ったようですが、すぐ馴れて合格。妹は子供達をビデオに撮るべくスタンバイ。「可愛い姪っ子の晴れ姿ですもの。花嫁花婿より姪っ子を主流に撮るわよ」と母親よりも張り切っていました。
準備万端整い、式に参加する花嫁、花婿の友人達も親族も三々五々、集まってきました。後は、花婿の到着を待つばかり。
ところが、待てど暮らせど、花婿が来ない。彼の両親と彼が泊まっているホテルに電話するも、もうタクシーに乗って出たと言うが、彼からの連絡はなし。まだ、今ほど誰でも携帯持っている時代じゃなかったんだけどね。花嫁の父はもう顔を真っ赤にして熊のように控え室でうろうろ。「大丈夫?救急車呼ぼうか?叔父さん、今にも脳溢血起こしそうだよ」と親戚が宣う。「だめ、救急車はひっくり返る前と死人は運ばない」と何とも不謹慎なひそひそ話。さすがに外国人の神父様も腕時計の針を指して何か喚いている。次の式もあるらしいし、もうさすがに一時間以上も遅れている。花婿の友人達も「あいつ、逃げたのか?」とこれまた不謹慎なセリフが聞こえてくる。「取りあえず、そこら辺の花婿の友人を代理に立てて、式だけでも挙げたら?」と迷案が飛び出す。
遂に中止かと覚悟した矢先、花婿さんが上着を小脇に必死の形相でやつでの木の影から飛び込んできた。事故渋滞で乗ったタクシーから降りられず、ようやく彼だけ駆けつけたとのこと。
ともかく式だ、式だとみんな持ち場に着いた。待ちくたびれた娘達もしゃんとして、ベールを持ち、花嫁と花嫁の父の後に立った。まだ花嫁の父は真っ赤な顔をしていたが、何とか落ち着いていたように見えたのだが。
歩き出した花嫁の父、娘の腕を取って超特急で、バージンロードを歩く、いや走って行くではないか。娘達は教わった通り、ゆっくりと歩くはずだったのだが、前を行く親子に引っ張られ、ベールを持ったまま走り出した。ビデオカメラを抱えた妹も必死に通路を走り、ビデオを回す。ドタドタとベールに引っ張られるようにして花婿の前に着いたときには、娘達は網にかかった魚のようにベールに巻き込まれていました。その後は早回しのテープよろしく神父さんの誓いの言葉も厳かとはほど遠い早回し。まるで、嵐のような式は終わり、披露宴へと皆、出発しました。
虚脱感に包まれていると後ろの聖歌隊のバルコニーから美しい賛美歌が聞こえてきました。戦い済んでではないけれど、ホッとしました。かっこいいからだけで結婚式を挙げる即席クリスチャンには聴けない歌声だよねえと娘達とゆっくり誰もいない礼拝堂で聴いていました。まあ、終わりよければすべて良しということで。
公開日:2015.05.07
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